物理的安定性とは、分散系が時間の経過とともに外観、質感、粒子径などの物理的特性を維持する能力を指します。物理的安定性が低いと、沈降、分離(creaming)、固化(caking)などの問題が発生する可能性があるため、分散系の物理的安定性を向上させるための調製方法には多くの努力と研究が注がれてきました1。また、物理的不安定性は製品の有効性や安全性にまで影響を及ぼす可能性があります2。
製品の物理的安定性は、温度、湿度、光への曝露など、さまざまな要因によって影響を受ける可能性があります。たとえば、保管中や輸送中、あるいは使用時に高温にさらされると、相分離や粒子径の変化が生じることがあり、それが顧客に与える印象や顧客満足度に影響を与える可能性があります3。
一方で、化学的安定性とは、分散系が時間の経過とともにその化学的完全性 (integrity) および有効性 (potency) を維持する能力を指します。ここでいう完全性および有効性とは、分散系中の有効成分の分子構造がそのまま保たれているか、変化していないかを意味します。化学的に不安定であると、薬剤や化学物質が分解されてしまい、その効果、安全性、保管期間 (Shelf-Life) に影響を及ぼす可能性があります。このような不安定性は、pHの変動、酸化、加水分解反応、または細菌の活動などによって引き起こされることが一般的です。
酸素は化学的安定性の観点に関して重大な課題を呈します。多くの医薬品分子は酸素と反応し、望ましくない化学変化を起こします。酸素との反応は分解や不純物・分解生成物の形成を引き起こします。水にさらされることで起こる加水分解反応も同様のプロセスであり、新たな望ましくない化合物の生成という同様の問題を引き起こします。
サンプル中の化学的および物理的安定性に関与する現象は、それぞれ異なる物理化学的メカニズムに起因するため、それぞれに対して異なる測定手法が必要となります。
物理的安定性は通常、目視観察および長期安定性試験によって評価される。サンプルに不安定性が認められるかどうかの判断には、数か月を要することもある。特にエマルションにおいては、粒子が懸濁状態を維持するか、沈降するか、あるいは相分離を起こすかを評価するために、沈降試験およびクリーミング試験が極めて重要である4。
粒子径の把握は、分散系の物理的安定性を評価・予測するうえで重要であり、最終製品の物理的および機械的特性を理解するための流動特性(レオロジー)測定にも不可欠です。物理的および長期的な安定性を総合的に評価するには、通常かなりの時間を要します。こうした評価の効率化には、先進的な分析機器の活用が有効であり、測定の処理能力(throughput)の向上、評価の客観性の確保、さらには分散系を「そのままの状態」で測定できるという利点があります。
化学的安定性の評価には、通常、化学構造の同定や定量に用いられる分析手法が使用されます。代表的な手法としては、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー(HPLC・GC)、質量分析(MS)、およびフーリエ変換赤外分光法(FTIR)などが挙げられます。これらの手法により、化学的不安定性に起因して生成される可能性のある分解生成物や不純物の同定および定量が可能となります。化学的安定性の評価には、通常、化学構造の同定や定量に用いられる分析手法が使用されます。代表的な手法としては、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー(HPLC・GC)、質量分析(MS)、およびフーリエ変換赤外分光法(FTIR)などが挙げられます。これらの手法により、化学的不安定性に起因して生成される可能性のある分解生成物や不純物の同定および定量が可能となります。さらに、医薬品製剤の保管期間(Shelf-Life)を評価するために、温度、湿度、光照射などのさまざまな環境条件下で分散安定性評価が実施されます。
物理的特性評価において、マイクロトラック(MICROTRAC)は、製品群の性能向上および品質最適化を目的とした高度かつ網羅的な測定を実施するために、最先端の物性評価装置を業界屈指のラインアップで提供しています。
TURBISCANシリーズは、製品中に生じうるあらゆる物理的不安定性を網羅的に評価するために設計されており、経時変化(aging)、保管期間(Shelf-Life)、分散性(dispersibility)、再分散性(redispersion)、相分離(phase sepatarion)、不安定化(distabilization)、凝集(aggregation)といった各種測定に対応した装置を備えています。
マイクロトラック (MICROTRAC)は、現代のラボにおけるさまざまな課題、たとえば省スペース設計の機器や、測定と連動した迅速なデータ解析の重要性を十分に認識しています。そのため、TURBISCANシリーズの全機種は、スピードと効率性を重視して設計されており、ラボ内での設置面積を最小限に抑えることを目的としています。また、ワンクリックで分散安定性評価が可能な機能も搭載されています。
TURBISCANシリーズは、ユーザーフレンドリーな設計が施されており、専門的な操作スキルを必要とせずに使用できます。測定温度範囲は20〜60 °Cに対応しており、市場投入後のさまざまな環境下における製品の物理的安定性を評価することが可能です。また、定量的な解析機能が組み込まれているため、分散系の製品間の比較が容易になり、製造プロセスの改良や設計変更の効果を客観的に評価することができます。
TURBISCAN TOWER や TURBISCAN TRILAB をはじめとする複数の機種は、さまざまな測定に対応可能です。中でも TURBISCAN LAB は、分散系の物理的安定性評価における国際的な標準測定装置として広く認知されています。
より高精度かつ定量的なデータに基づいて分散安定性試験を加速させ、競合他社に差をつける方法についてご興味がありましたら、ぜひ当社までお問い合わせください。TURBISCANが物理的安定性評価における最適なソリューションとなり得る理由を、弊社の専門チームがご説明いたします。